昭和35年10月21日 売掛代金請求事件 最高裁 第二小法廷判決
*実際の事例では、パン田さんが本当に東京地裁の部署では無いことを知らなかったのか、過失は無かったのかについて高裁へ審理を差し戻しています。
ポイントは?
民法109条では
「他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。」
と規定されています。簡単に言えば「代理権を与えたなら、代理人がしたことには責任を負えよ」ということです。
マンガを見ればわかるとおり、東京地裁は東京地方裁判所厚生部に代理権を与えた訳ではありません。しかし、代理権を与えて無いとはいえ、裁判所の一部署と勘違いさせるような外形を作ったのは、東京地裁ということは明らかです。
つまり、この事件では代理権を与えていないが、代理権を与えたかのような外形を作りだしたことについて責任を負うのかどうかが論点となった訳です。
結論としては、取引の相手方に一部署と誤認させるような、外形を作った東京地裁に責任があるとしました。とても妥当な判決だとは思いますが、当初は東京地裁自体が判決を出したという影響があったのか、東京地裁には責任が無いと判断されていました(判決を出したのは東京地裁自身です)。高裁も東京地裁の責任を認めず、最終的に最高裁がひっくり返したという事件なのです。
関連条文は?
第109条
第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。