昭和63年7月1日 執行文付与に対する異議事件 第二小法廷
*実際の事例では、最初の和解は裁判により成立しています。また、パン田さんは土地の賃料支払いについて調停申立ても行っていました。
ポイントは?
今回の事例では、パン田さんとカラス田さんは契約関係が何もありません。契約関係で言うと…
・カラス田さん→ハムちゃん→パン田さん
という形で、間にハムちゃんが入っている状態なのです。そして、パン田さんはカラス田さんとハムちゃんの土地の賃貸借契約が切れると、自分が住んでいる家のハムちゃんとの契約も終ってしまうという立場にいるのです。
こんなときに、土地の借主であるハムちゃんが貸主であるカラス田さんに、土地の賃料を支払わないときに、土地の上にある建物の借主がハムちゃんに代わって、カラス田さんに賃料の支払いをしても良いのか?ということが問題となったのです。
民法では、「第三者の支払いもOK」とはなっていますが、同時に「利害関係の無い第三者は債務者の意思に反して支払いできないよ」とも書かれているのです。ということで、パン田さんが利害関係がある第三者と言えるのか?ということで争われたのです。
判決では、パン田さんを“利害関係がある第三者”と判断しました。つまり、ハムちゃんから承諾を得る必要は無く、パン田さんがハムちゃんの代わりに賃料の支払いをすることは問題無いという結論になったのです。パン田さんとカラス田さんは契約関係にありませんが、ハムちゃんとカラス田さんの土地の賃貸借契約が終了すると、自分が借りている建物の賃貸借契約が終了してしまう立場と言う訳で、土地の賃貸借契約解除を阻止する権利があるという判断をされたのです。
関連条文は?
第474条
1.債務の弁済は、第三者もすることができる。ただし、その債務の性質がこれを許さないとき、又は当事者が反対の意思を表示したときは、この限りでない。
2.利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。