昭和45年6月24日 定期預金等請求事件 大法廷
ポイントは?
パン田さんはカラス田銀行に預金を預けていて、カラス田銀行はパン田さんにお金を貸していました。
まず、パン田さんの預金が差押えされた!という事情が発生すると、パン田さんはカラス田銀行から借りているお金を一括で返済するという契約になっていました。そして、カラス田銀行は預金をすぐに払い戻ししなくてもOKという期限の利益があるけど、これを放棄して相殺ができる状態になる(相殺適状)という契約もあったのです。
ちょっとややこしいですがこれが相殺予約です。
今回はこの相殺予約が、差押えをした第三者(マンガの事例では国税局)との関係でどうなるのかが論点となったのです。
判決では、差押え前に債権を取得して、それが相殺できる状態(相殺適状)にさえなっていれば、相殺は有効でカラス田銀行のパン田さんに対する債権は消えてしまうと判断しました。そのため、差押えは出来ないことになります。 民法には「差押え後に取得した債権では、差押えに対抗できないよ」と書かれていますが、これは「差押え前に取得していた債権ならOK」という解釈をするべきだという考え方になった訳です。
関連条文は?
第505条
1.二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2.前項の規定は、当事者が反対の意思を表示した場合には、適用しない。ただし、その意思表示は、善意の第三者に対抗することができない。
第511条
支払の差止めを受けた第三債務者は、その後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができない。