平成7年7月7日 国道43号・阪神高速道路騒音排気ガス規制等請求事件 最高裁 第二小法廷判決
*実際の事例では、道路公団だけではなく国も被告となっており、差止請求と損害賠償請求は別の判決となります。また、原告は過去の損害に対する賠償請求だけではなく、将来の損害に対しても賠償請求していましたが、判決で認められたのは過去の損害に対する賠償請求だけとなります。
ポイントは?
このマンガの事例は国道43号線訴訟として知られるもので、神戸市と大阪市を結ぶ地域でも重要な役割を果たす国道に関して起きた裁判となります。
国道周辺の住民は騒音と排気ガス(二酸化炭素)に悩まされていたのですが、その損害に対して損害賠償請求だけではなく、騒音と排気ガスが周辺住宅に届かないようにさせることを求めて訴訟を起こしたのです。こういった何らかの行為をやめるように請求することを【差止請求】と言います。つまり、この訴訟は損害賠償請求と差止請求と二つの要求をしたものになります。
判決では、損害賠償請求は認めましたが、差止請求は認めませんでした。損害賠償請求を認めるということは、騒音や排気ガスが受忍限度を超えて違法だと判断したと言うことです。ところが、差止請求は認めていないのです。
なぜ損害賠償請求と差止請求で結論が変わっているのかというと、受忍限度の程度について差止請求のほうがより高くなるという判断があったからです。損害賠償請求は当事者同士がお金で解決する問題なので、その影響は当事者だけの問題で済みます。しかし、差止請求を認めるとその影響は当事者以外にも出てきます。今回の国道に関しては、地域でも重要なものであることから、差止を認めるための受忍限度を損害賠償請求のときと同じように考えることは出来ないということなのです。
ちなみに、この訴訟では差止請求は認められなかったのですが、現在の国道43号線では速度規制が厳しくなっていたり、防音壁が設置されたりなどの措置が取られています。過去の損害について賠償を認める判決が出たということは、差止請求は回避出来たとしても、道路公団側はこのまま手を打たないことには再度損害賠償する必要性が出てくるのです。つまり、差止請求がダメで損害賠償請求だけが認められたことにも、一定の意味があったと言えるのです。
関連条文は?
第414条
1.債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、その強制履行を裁判所に請求することができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2.債務の性質が強制履行を許さない場合において、その債務が作為を目的とするときは、債権者は、債務者の費用で第三者にこれをさせることを裁判所に請求することができる。ただし、法律行為を目的とする債務については、裁判をもって債務者の意思表示に代えることができる。
3.不作為を目的とする債務については、債務者の費用で、債務者がした行為の結果を除去し、又は将来のため適当な処分をすることを裁判所に請求することができる。
4.前三項の規定は、損害賠償の請求を妨げない。
第709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。