昭和10年10月1日 所有権確認並家屋明渡請求事件 大審院 第二民事部判決
ポイントは?
この判例の分かり辛いところは、所有権を争っているはずなのに、なぜか「建物がいつから不動産になるのか?」が論点になっていることではないでしょうか。
なぜこのような論点が浮上するかというと、カラス田さんが作りかけていた家が不動産ではない場合は、その後パン田さんが家を建築することによって所有権を取得(原始取得)することになります。この場合はパン田さんの勝ちになるのです。
その根拠となる条文は次のとおりです。
民法246条「他人の動産に工作を加えた者(以下この条において「加工者」という。)があるときは、その加工物の所有権は、材料の所有者に帰属する。ただし、工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは、加工者がその加工物の所有権を取得する。」
つまり、パン田さんが家を建築(加工)することによって当然に所有権を取得する訳です。カラス田さんは何の権利も持っていないので、無権利者から権利を取得したハムちゃんの登記は無効になります。
ところが、カラス田さんの作りかけの家が不動産だとすると、どちらが先に登記をしたのか?が問題になってくるのですね。この場合は、先に登記をしているハムちゃんの登記が有効になるのです(競売手続き中という事情はここでは考慮しません)。
関連条文は?
第177条
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
第246条
1.他人の動産に工作を加えた者(以下この条において「加工者」という。)があるときは、その加工物の所有権は、材料の所有者に帰属する。ただし、工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは、加工者がその加工物の所有権を取得する。