平成元年9月14日 建物所有権移転登記抹消登記手続請求事件 最高裁 第一小法廷判決
*実際の事例では、パン田さんの勘違いが要素の錯誤にあたるのか、重過失は無かったのかの判断について高裁に審理が差し戻されていますので、この時点で財産分与を無効とした訳ではありません。
ポイントは?
民法には「意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする」という規定があります。
「錯誤」というと分かりづらいですが、簡単に言えば「勘違い」ということです。この事例ではパン田さんは「自分には税金が掛からない」と錯誤(勘違い)をしていたのです。
財産分与で家を与える動機は「自分には税金がかからない。だから家をあげちゃおう」というものだった訳です。
基本的には、こういった動機はきちんと相手に伝えられていないといけません。
この裁判では相手に動機を表示していない場合に、黙示的でも伝えられたとして良いのかどうかが論点となったのです。
判決では、パン田さんが自分に税金がかからないことを前提にしていたのは、黙示的に表示されていたとして、審理を高裁に差し戻しました。つまり、動機は必ずしも表示されている必要はないと判断したのです。動機の表示は黙示的でも、認められる場合があると理解しておきましょう。
関連条文は?
第95条
意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。