昭和60年11月29日 土地所有権移転登記手続請求事件 最高裁 第二小法廷判決
ポイントは?
この事件では民法110条に定められている「第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるとき」について争いになりました。
カラス田水産協同組合では、定款(組合の決まりごとが書かれたもの)に“固定資産の取得または処分に関しては理事会の決議が必要”と定められていました。
その上で、パン田さんは
・理事の権限に制限が加えられていることを知らなかった
・(仮に理事の権限制限を知っていたとしても)理事会の決議が得られていると思ってた
と主張しました。
判決では、理事の権限に制限が加えられていたことを知っていたとしても、理事会の決議を得られたと信じていて、信じたことに正当な理由があるときはパン田さんは保護されるとしました。
しかし、パン田さんは事実関係からすると、信じていたことに正当な理由は無いという判断をされたため、土地の所有権移転登記手続きは認めなかったのです。パン田さんは保護されませんが、“決議を得たと正当な理由から信じた第三者”は保護されますのでこの理屈を覚えておきましょう。
関連条文は?
第110条
前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。