昭和33年6月20日 不動産所有権移転登記手続等請求事件 最高裁 第二小法廷
ポイントは?
民法176条では所有権が移転する時期について“当事者の意思表示による”と書いてあります。
つまり、売買契約であれば契約が成立した時点で、その物の所有権は移るということです。ですが、その物を引き渡す前の所有権はどうなってるの?ということで争いになったのがこの事件です。
判決では所有がいつ移転するのか?ということと、いつ引き渡すのか?というのは別問題だという判断をしました。この事例では、売買代金の支払いと家・土地の引き渡しは同時に履行をするべきだとしていますが、所有権は売買契約の時に既に移転しているということです。カラス田さんが同時履行の抗弁権で拒めるのは、家・土地の引き渡しであって所有権の移転ではないということですね。
ただし、仮にパン田さんとカラス田さんが「代金の支払いと同時に所有権が移転する」とか「登記と同時に所有権が移転する」という契約をしている場合は別で、こういった場合は当事者が契約で決めたときに所有権が移転することになります。
関連条文は?
第176条
物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。
第533条
双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
第555条
売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。