平成9年2月14日 短期賃貸借解除等請求事件 最高裁 第三小法廷
ポイントは?
地上権というのは、土地に家を建てたり竹木を所有することができる権利です。となると、土地を賃貸借契約で借りる借地との違いが分かり辛いところですが、実際のところ似たようなものと考えても問題ないです(厳密には色々違いがありますが…)。
そして、法定地上権というのは法律で強制的に地上権が成立するというもので、次の場合に発生します。
・抵当権が設定されたときに土地と家の所有者が同じ
・抵当権が実行されて土地と家の所有者が違う人になった
土地の抵当権が実行されて、競売で他人の土地になってしまっても家の所有者には、法定地上権が発生してそのまま住むことが出来るという権利なのです。
こう聞くと、その土地を買う人が可哀想と思ってしまいそうなところですが、そもそも法定地上権が発生することは事前に分かることなので、競売で買うときはその分価値は下がってしまうのです。それに法定地上権は無料で使えるという権利ではないので、賃料も受け取ることが出来ます。
今回の事例では、
・抵当権が設定されたときに土地と家の所有者が同じ
・抵当権が実行される前に、家が再築された
というものです。一見すると法定地上権が発生する要件は満たしているようにも見えますが、家が再築されてしまっている場合にまで、法定地上権を認めて良いのか?ということで争いになったのです。
判決では、抵当権の設定後に再築された家には、法定地上権は発生しないと判断されました。カラス田さんは更地になった時点で、法定地上権の制約が無い土地として担保価値を評価しているのに、それが再築された家で価値が下がってしまってはたまらないという訳ですね。
関連条文は?
第265条
地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。
第388条
土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。