昭和60年11月29日 所有権移転登記抹消登記手続請求事件 第二小法廷判決
ポイントは?
贈与というのは、一方が「あげる」と言ったとしても成立しません。贈与を受ける側が「あげる」という申し出に「もらう」と合意することで成立するようになっています。こういった契約の形を“諾成契約”と言います。
更に、民法には贈与することを書面で明らかにしていない場合は、贈与が完了していなければ、いつでも撤回出来るとも規定されています。贈与が完了している場合は、さすがに撤回を認めるのはもらう側にとっては、酷なことなので贈与が完了していない場合だけ、いつでも撤回OKとしてあるのですね。
今回の事例で、問題になったのは贈与することを明らかにした書面が何を意味するのか?という部分です。
きちんとした契約書にして、お互いに贈与したことについて合意したことを明確にしておく必要があるのか、それとも贈与する意思があることが明確になってさえすれば良いのかということで、争いになったのです。
判決では、贈与をする側の意思が明確になっていれば、第三者宛の内容証明郵便でも“書面による贈与”と判断しました。内容証明郵便の内容として、パン太郎さんに土地を贈与したこと、土地の名義人であるカラス田さんにパン太郎さんに直接名義を変更する登記手続きをして欲しいと依頼していたことから、パン蔵さんのパン太郎さんに対する贈与の意思は明確だとしたのです。
関連条文は?
第549条
贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
第550条
書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。