平成22年6月1日 損害賠償請求、民訴法260条2項の申立て事件 第三小法廷判決
ポイントは?
民法では、売買契約を交わした当時に発見出来なかった瑕疵(欠陥)が、後から見つかったときは、損害賠償請求などが出来ると定められています。こういった後から見つかるような瑕疵を“隠れた瑕疵”と言います。
今回の事例では、フッ素について売買契約を交わした当時には危険性が認識されていなかったものが、後になってから危険性が認識されて法律による規制も行われました。売買契約をしてから10年も経過してから、フッ素が危険と分かって、購入した土地の土壌には実際に基準値を大幅に超えるフッ素が含まれていたのです。つまり、購入した土地は人体への影響も考えられる問題物件だったという訳です。
これが“隠れた瑕疵”と言えるのであれば、ハムちゃんは損害を賠償する必要が出てきます。売買契約をされた当時の認識を基に“隠れた瑕疵”があったかどうかを判断するのか、売買契約後に判明した認識を基に“隠れた瑕疵”があったかどうかを判断するのかということで争いになったということです。
判決では、売買契約がされた当時の取引観念に基づいて判断をするべきとされて、フッ素が土壌に含まれていたことは“隠れた瑕疵”にはならないとされました。危険性が認識されていたかどうかは別として「土地にはフッ素を含まない」という合意をパン田さんとハムちゃんがすることは自由なのですが、それもされていなかったということで、今回のような結論となりました。
関連条文は?
第566条
1.売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
2.前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
3.前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。
第570条
売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。