昭和56年1月19日 譲受債権請求事件 第二小法廷判決
*実際の事例は、パン田さんは保証金の返還請求権を第三者に譲渡しており、譲渡された第三者がハムちゃんに対して保証金の返還請求をしたものとなります。
ポイントは?
委任契約は、法律行為を代わりにしてもらうという契約をするもので、依頼する側、される側の双方が合意すれば成立します。法律行為ではない事実行為の委託の場合も、委任契約の規定は適用されることになります
法律行為とか、事実行為と言ってもその違いが分かり辛いと思いますので、以下のように考えてみてください。
<法律行為の委任>
「ティッシュを買ってきて!」 → 「ティッシュを買ってきた」
ティッシュの売買契約という法律効果が発生する行為を代わりにするのが、法律行為の委任となります。
<事実行為の委託>
「ティッシュをこっちに持ってきて!」 → 「ティッシュを持ってきたよ」
ティッシュがA地点からB地点に移動しただけで、法律上の効果は何も発生していないので事実行為の委託となります。
この委任契約は、民法上では
「各当事者がいつでも解除できるよ」
と規定しています。
ところが、今回の事例では委任契約を受ける側(受任者)にとって利益がある契約なのに、そのような場合にまで一方的な委任契約の解除が認められるのかということで争いになったのです。
判決では、委任契約を受ける側に利益がある場合で、契約を継続出来ないやむを得ない事情が無いとしても、依頼した側から一方的に契約を解除出来ると判断しました。当事者のどちらかが継続したくないと考えている委任契約を継続するのは、お互いの信頼関係に基づく委任契約の本旨に合わないし、委任契約の解除によって、損害が発生したとしてもそれは損害賠償で解決すれば良いということなのです。
関連条文は?
第643条
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
第651条
1.委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
2. 当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。