昭和45年10月21日 建物明渡等請求事件 大法廷判決
ポイントは?
贈与契約自体は、口約束でも成立しますが引渡しなどの履行が済んでいない場合は、これを撤回することが出来ます。
今回の事例では、未登記の建物について引渡すだけで履行と言えるのかどうかという部分で争いになったのです。また、未登記の建物を引渡すだけで履行したことになったとして贈与契約の撤回が認められないとしても、愛人契約に基づく贈与契約は無効になってしまいます。
撤回は認められない、契約は無効になる、という場合に所有権は誰のものなるのかという部分も論点となったのです。
判決では、未登記の建物は引渡すだけで履行したことになり、不法原因給付として返還請求は行えないと判断しました。また、所有権に基づいても不当利得に基づいても返還請求をパン田さんが出来ないことの反射的効果から、家を受け取ったパン美さんが所有権を得ると判断したのです。
関連条文は?
第549条
贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
第550条
書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。
第703条
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
第708条
不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。