平成16年11月12日 損害賠償請求事件 最高裁 第二小法廷判決
*実際の事例では、殉職した警察官の妻だけではなく子も暴力団組長に対して損害賠償請求をしています。
ポイントは?
民法では【事業のため】に人を使用している人は、使用している人が【事業の執行】で他人に損害を与えたら損害賠償する必要があると定めています。これを【使用者責任】と言います。この規定は基本的には、一般企業が企業運営をする上で、他者に損害を与えてしまうような場合を想定しています。
マンガの事例は、民法の使用者責任の規定を使って、暴力団組長の責任を問おうとしたものとなっています。また、責任追及する相手は組長とはいっても、誤発砲をした組員が所属する組の組長ではなく、上部団体の最高位に位置する組長という事情があります。つまり、厳密に言えば違う組の組長の使用者責任を追及しようとしているのです。
判決では、暴力団の威力を使った資金獲得活動を事業と認めて、発砲などの暴力行為は事業の執行と密接に関連する行為としました。その上で、ハムちゃんが上部団体の組長だとしても、その意向は末端組織の組員にまで伝達される体制だったことから、直接・間接的な指揮監督がされていたとして、上部団体の組長ハムちゃんは3次団体の組員がしたことであっても使用者責任を負うと判断されました。
このマンガの事例は民法の使用者責任の規定に基づいて、暴力団組長への責任追及に成功したものとなっていますが、この事件後に「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」が改正されて、暴力団組長が損害賠償責任を負うことが明記されるなどして、暴力団組長の責任が明確化されています。
関連条文は?
第709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
第715条
1.ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2.使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3.前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。