昭和36年9月6日 所得税審査決定取消事件 最高裁 大法廷判決
*パン田さんの収入は仮定のものとなります。
ポイントは?
民法では、婚姻してからの財産について次の規定があります。
「婚姻中に自分で得た財産は単独の財産になるよ」
例えば、夫が会社からもらう給料であれば夫名義で入ってくるはずです。こういった夫名義で入ってくる収入は夫の単独の財産になるということです。そして、所得税法では民法の上記の規定を前提として、夫名義で入ってきた収入は夫の収入として確定申告しないといけないことになっています。
ところが、マンガの事例ではパン田さんとパン美さん夫婦が、夫のパン田さん名義で入ってきた収入を半分ずつに分けて、それぞれ別に確定申告を行ったのです。パン田さん夫婦からすると夫が稼ぐ収入は妻の支えがあってこそだという認識があり、妻の収入として分けても問題ないだろうという考えがあったのです。
しかし、税務署から夫名義の収入を二人で分けることはダメだと指摘されてしまいます。そこで、パン田さんは民法の規定は憲法の【婚姻中の財産権について男女平等になるように法律を作らないといけないよ】に反していると主張したのです。夫が収入を得るためには妻も協力しているのに、それが夫だけのものになるのはおかしいという訳です。
判決では、憲法の規定は夫か妻かという立場に基づいた差別がダメだと言っているのであって、個別に常に同じ権利を認めたものではないと指摘しました。また、憲法の規定は夫だけに適用されるものではなく妻にも適用され、夫婦には財産分与請求権や相続権、生活費の請求権などが規定されて夫婦の間に不平等が起こらないように配慮がされているとしました。以上を踏まえて、結論として民法の規定は憲法違反になるものではないと判断しました。
関連条文は?
第762条
1.夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
2.夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。
<憲法>
第24条
婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。