昭和56年8月24日 扶養料請求申立審判に対する即時抗告申立事件 仙台高裁 決定
ポイントは?
協議離婚をするときの養育費の取り決めについて、民法には次のような規定があります。
「父母が協議離婚するときは、子どもの監護をするものや、費用の分担を決めないといけないよ」
*一部要約しています。
この規定のとおり、養育費を決めるのは父母であって子どもではありません。そして、子ども自身が生活費である扶養料を請求することについては、次の規定があります。
「直系血族と兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務があるよ」
直系血族は、親と子、祖父と孫のように家系の中で、縦に繋がっている関係のことを言います。マンガの事例に出てくるパン子ちゃんは、父親のパン太さんとは当たり前に直系血族になるので、扶養してもらうことができるということになります。
こんな感じで、養育費と扶養料は請求する根拠が違うものになります。でも、そうは言っても、養育費も扶養料も実質的には同じものです。
というわけで、養育費と扶養料をまったく別のものとして扱うのか、それとも同じものとして扱って、父母が合意している以上のものを認めないのかという点が論点となって争いになったのです。
判決では、養育費についての和解は当事者ではない子どもには及ばないとして、養育費とは別に扶養料の請求を認めました。そして、養育費を支払っていることは扶養料を決める要素の一つでしかないとして、養育費を差引きすることも認めませんでした。
ただし、この決定には批判もあり、その後に出た決定では支払っている養育費を差引きして扶養料を決めるとしているものもあります。
関連条文は?
766条
1.父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
第877条
1.直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
第880条
扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消しをすることができる。
第881条
扶養を受ける権利は、処分することができない。