平成元年11月24日 不動産登記申請却下決定取消請求事件 最高裁 第二小法廷 判決
*実際の事例では、登記官の登記申請却下決定に対する取消しを請求したものとなります。また、特別縁故者となったものが、どのような経緯・理由で特別縁故者と認められたのかは不明です。マンガ内のカラス田さんが特別縁故者と認められるに至った経過部分は、創作となります。
ポイントは?
亡くなった人に相続人がいない場合は、特別縁故者(亡くなった人を献身的に世話をした人など)が相続財産の分与を受けることができるという規定が民法にはあります。
そのため、相続人のいないパン美さんの面倒をみてきたカラス田さんは、特別縁故者としてパン美さんが共有持分を持っている土地の分与を受けようとしたわけです。
ところが、民法には次のような規定もありました。
「共有者の一人が、その持分を放棄したり、死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者のものになるよ」
そして、民法にはどちらの規定を優先するのかは書かれていません。
こういった経緯があり、共有の土地持分が特別縁故者のものになるのか、他の共有者のものになるのかで争いになってしまったということです。
判決では、共有の土地は特別縁故者の財産分与の対象になると判断しました。
なぜかというと、特別縁故者は、相続財産から分与を受けることができるのですが、共有持分をその対象外とするのは合理的な説明ができないからです。そのため、相続人がいない共有者の一人が亡くなった場合に、他共有者のものになるのは特別縁故者などがいないことが確定してからになるとされました。
関連条文は?
第255条
共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
第958条
前条第一項の期間の満了後、なお相続人のあることが明らかでないときは、家庭裁判所は、相続財産の管理人又は検察官の請求によって、相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない。
第958条の2
前条の期間内に相続人としての権利を主張する者がないときは、相続人並びに相続財産の管理人に知れなかった相続債権者及び受遺者は、その権利を行使することができない
第958条の3
1.前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。