昭和61年6月11日 損害賠償請求事件 最高裁判所 大法廷判決
ポイントは?
憲法の判例として有名な事件です。憲法以外に民法上の問題も絡んできますので、合わせて論点をご紹介します。
この裁判では、
・出版の事前差し止めは許されるのか?
・許されるとした場合はその要件は?
・そもそも事前差し止めは検閲にあたるのではないか?
という部分で争いになりました。
結論としては、出版の差し止めを“原則として許されない(特に選挙の候補者に関わるものであれば)”としながらも
・表現内容が真実でない
・専ら公益を図る目的のものでないことが明白である場合
・被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるとき
以上に該当する場合は、出版物の事前差し止めが許されると判断しました。
また、行政機関が事前規制をする場合とは異なり、裁判所が紛争となっている問題について、名誉棄損の程度や事前差し止めの必要性を検討しているのであるから検閲にも当たらないとしました。
関連条文は?
第723条
他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。
<日本国憲法>
第21条
2. 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。