昭和51年6月25日 約束手形金等請求事件 最高裁 第二小法廷判決
*実際の事例で結ばれた保証契約は根保証契約(保証期間、限度額の定めなし)となります。
ポイントは?
この事件では、民法110条に定められている「第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるとき」の“正当な理由”はどんな場合に認められるのか?が論点になりました。
日本では契約のときに、印鑑が押印してあるかどうかを重要視する風潮がありますし、更に印鑑証明書まで添付されていれば普通は“正当な理由がある”と考えて良いでしょう。
判決でも次のように判断されています。
「特段の事情が無い限り、信じたことにつき正当理由があるというべきである」
しかし、これでこの事件の連帯保証人の契約が有効というわけではなく、判決では上記のとおり“特段の事情が無い限り”という前提条件を付けました。
そして、この事件では
・代理人として間に立ったカラス田さんは保証人がいることで得をする人だった
・金額も期限も定めない重たい責任を追う連帯保証契約(根保証契約)だった
・パン田さんは、義父さんが本当に契約する意思があったのか確認しようとしなかった
という“特段の事情”があるから、正当な理由があるとは言えないと判断したのです。
関連条文は?
第109条
第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
第110条
前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。