昭和45年7月28日 土地所有権移転登記手続請求事件 最高裁 第三小法廷判決
ポイントは?
この事件では、民法109条と110条が問題になりました。
まず、民法109条は「代理権を与えたと表示した人は、それを信じた人に対して責任を取りなさいよ」と言っています。
でも、事実関係を見る限り、パン田さんはハムちゃんに代理権は与えていません。ですが、パン田さんは信頼したカラス田さんに代理権を与えています。そして、ハムちゃんはカラス田さんの代理人ですから、パン田さんから見れば同じく信頼した人という見方ができます。
これでパン田さんは代理権を与えたしまったという責任を負うことになりました。ここまでは民法109条の問題です。
しかし、パン田さんは所有権移転登記の代理権を与えただけで、売買契約の代理権までは与えていません。というわけで、今度は民法110条の「代理人が権限外の行為をしちゃった時に、相手方が正当な理由から信じちゃった場合は代理権を与えた人は責任を取るんだよ」という規定を適用します。
これで、民法109条と110条が同時に適用されることになったという訳です。同時に適用されることを“重畳適用”というのです。
関連条文は?
第109条
第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
第110条
前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。