昭和41年12月23日 貸金敷金返還請求事件 最高裁 第二小法廷
*実際の事例では、牛田さんは建物の所有権は建築当初から自分に帰属しているなどの主張もしていました。
ポイントは?
この事例のように牛田さんがハムちゃんにした請求を代償請求と言います。しかし、この代償請求については民法にも明確に書かれている事では無いのです。
そして、ハムちゃんはそもそも火災保険金は代償物では無いという主張もしました。火災保険金は保険契約で得たものだから、建物の引渡しが履行不能になったことで得た利益ではないというのがその根拠です。
判決では、以下のように判断しました。
・代償請求は民法上問題無く出来る(民法536条2項が根拠)
・火災保険金は代償物
火災保険金は保険契約から生じたものかもしれませんが、それが発生したのは建物の引渡しが履行不能になったのと、同じ火事から発生したのだから代償物に該当するという考え方です。また、履行不能になったことについてハムちゃんに責任は無いので、賠償する責任も無しということになりそうですが、それでは建物の引渡しを受けることが出来なくなった牛田さんとの関係で言えば公平ではありません。そこで、公平の観点から牛田さんは損害の範囲内で代償請求を出来るという結論になったのです。
ちなみに、今後予定される民法改正では代償請求についても明記されるようです。
関連条文は?
第415条
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。
第416条
1.債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2.特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。
第536条
1.前二条に規定する場合を除き、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。
2.債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。