昭和53年12月22日 取立債権請求事件 第二小法廷判決
ポイントは?
敷金というのは、賃貸借契約から生まれる賃料の未払いや、賃貸借契約から生まれる損害をカバーするためにあるものです。つまり、賃貸借契約が終了して借りていた土地を返せば敷金を受け取っていた借主は敷金を清算して、貸主に返すことになります。
ところが、今回の事例では、カラス田さんとハムちゃんが交わした土地の賃貸借契約から、ハムちゃんが抜けて、パン田さんが代わりに入ったので賃貸借契約自体は終了していないのです。そこで、土地の貸主であるカラス田さんは、敷金は新しい借主であるパン田さんに承継されるはずだと主張したのです。それに対して国側は、カラス田さんとハムちゃんの賃貸借関係が終了した以上は、敷金をハムちゃんに返還する必要性が生じているのだから、敷金の差押えをした国に敷金を支払えと主張しました。
判決では、敷金契約は賃貸借契約に従たる契約とは言えるけど、別個の契約だとした上で、敷金関係は承継されないと判断をしました。仮にハムちゃんが敷金関係が承継されることに同意していたり、敷金返還請求権をパン田さんに譲渡していれば敷金関係がパン田さんに移すことは可能とも判断しているのですが、今回はその前に国が差押えをしていたことから、国の差押えが優先されるとしました。
関連条文は?
第601条
賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
第612条
1.賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。