平成10年4月30日 損害賠償請求、同附帯事件 最高裁 第一小法廷判決
*実際の事例では、宝石の所有者はカラス宝石に宝石の枠加工を依頼した一般客となります。
ポイントは?
宅配便(ヤマト運輸は宅急便)は基本的には薄利多売な商売になっています。日本の端から端に宅配するのに2,000円もかからない程度で送れるのですから、便利に利用している人も多いでしょう。
しかし、そんな便利な宅配便も100%ミスなく配達が出来る訳ではありません。そして、荷物を紛失したり壊したりしたときに、高価なものがあると賠償するのも宅配会社の負担が重くなってしまいます。そこで、宅配会社は賠償額について限度額30万円を規定するのが一般的になっています。これを免責約款などと言います。
ところが、今回のマンガの事例では宅配会社に賠償請求しているカラス田さんは、宅配を依頼していないのです。宅配の受取人であり荷物の所有者ではあったけど、宅配契約をした訳ではないので宅配会社の規約にある免責約款は関係ないのではないかという考えが成り立つのです。
カラス田さんは宅配契約を結んでいないので、債務不履行責任は追及出来ません。そこで、不法行為責任を追及するという形を取っています。こんな感じで、宅配契約外の第三者が不法行為責任を追及した場合に、宅配会社の免責約款は適用されるのかということで争いになったのです。
判決では、カラス田さんが宅配会社に免責約款で定められた30万円を超えて、損害賠償請求するのは信義則に反して許されないと判断しました。
まず、論点として宅配会社の免責約款が債務不履行だけではなく、不法行為にも適用されるのかという点については不法行為にも適用されるとしました。その上で、カラス田さんは第三者ではあるのですが、宝石を宅配で送ることを容認していたこと、普段から低い料金で宝石を送り合っていたなどの事情があることから、免責約款で定められた30万円を超えて損害賠償請求することは信義則に反するとしたのです。
関連条文は?
第1条
2.権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
第415条
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。
第709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。