昭和30年6月2日 動産引渡請求事件 最高裁 第一小法廷
*実際の事例では、ハムちゃんは映写機と共に映画館の経営権も取得しています。また、ハムちゃんは映写機について即時取得を主張していますがこれについては、破棄差戻しとされており判断されていません。
ポイントは?
民法178条では、映写機のような動産は引渡しを受けていないと第三者に対抗できないとしています。不動産の場合は、登記が対抗要件になっていましたが、動産の場合は不動産と違って簡単に手渡すことが出来るので、持っているかどうかを対抗要件にしたという訳です。
ところが、民法には引渡しをしていなくても、占有しているとされる規定もあるのです。
それが民法183条で次のように規定されています。
「代理人が自分の手元にあるものを、本人のために占有するっていう場合は本人が占有権を取得するよ」
これを“占有改定”と言います。
裁判所はこの規定について、譲渡担保の場合はパン田さんとカラス田さんの合意がなくても占有改定によって、占有権はカラス田さんに移転していると判断しました。つまり、カラス田さんは引渡しを受けたのと同じ状態になるので、第三者であるハムちゃんに対抗できる状態になったということです。
ただし、ハムちゃんが映写機の所有権を即時取得(即時取得についてはこちら)している場合は、カラス田さんは占有改定では即時取得が成立しないので、所有権を失うという判断がされる可能性はあります(この点については判断されず破棄差戻しとされています)。
関連条文は?
第178条
動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。
第182条
1.占有権の譲渡は、占有物の引渡しによってする。
2.譲受人又はその代理人が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる。
第183条
代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。
第184条
代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する。