昭和51年2月13日 損害賠償請求事件 第二小法廷判決
ポイントは?
民法では、他人物の売買契約すること自体はまったく問題が無いものとしています。売り主が、売買の対象となる物を手に入れれば良いだけなんですね。現実にも、他人物の売買契約自体は珍しいことではありません。
ただし、他人物を買い主へ引き渡す義務を売り主は負う訳ですが、この義務を果たせない場合というのも当然出てきます。この時に、その物を引き渡していなければ、代金を買い主へ返せば良いだけなので簡単な話です。
ところが、今回の事例は他人物売買で、その他人から物(=車)の所有権を手に入れて無いにも関わらず、その物をパン田さんは他人の物のまま1年間も利用していたというものになるのです。
まず、カラス田さんは売買代金を返すのは当然としても、パン田さんが1年間も使用していた利益をどのように扱うのかということで争いになったのです。
判決では、パン田さんが1年間利用してきた利益を返還する必要があると判断しました。売買契約を解除することで、全てを無かったことにする必要があります。そうなると、パン田さんが得ていた利益も返還しないと、パン田さんの元には売買契約を解除したのに“1年間車を使用した利益”が残ることになってしまいます。というわけで、パン田さんには何も責任が無いのに1年間車を使った使用利益を返還する必要があるという判断がされたのです。
関連条文は?
第560条
他人の権利を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。
第561条
前条の場合において、売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の時においてその権利が売主に属しないことを知っていたときは、損害賠償の請求をすることができない。