平成8年4月26日 第三者異議事件 第二小法廷判決
ポイントは?
銀行にお金を預けることを預金といいますが、この預金がどのような法律的な性質を持つのかというと、消費寄託契約となります。
消費寄託契約というのは、文字通り預けた(寄託した)ものを消費して良いという契約です。銀行は預金として預かったお金を消費してよくて、銀行は預かったお金を融資金に使ったり、ATMに入れて他人の預金払い出しに利用しても問題ないのです。そして、預金をした人が払い出しを要求してきた場合は、預かったときとは別のお金で払い出しをすれば良いことになるのです。「別のお金」の意味が分かり辛いと思いますが、同じ1万円でも、どの1万円札を使って払い出しをするかは銀行側の自由という意味です。預金として預かった1万円札とは違う1万円札でも、お金としての価値が1万円であればOKということです。
マンガの事例では、この消費寄託契約である預金として成立するためにどのような要件が必要なのか?ということで争いになったのです。法律上、お金を受け取る権利が何もないお金が振り込まれたとして、そのお金は預金として成立するのかどうかということです。
判決では、振り込みを受けたお金について法律上の原因、法律関係が無いとしても振り込みを受けた者の預金として成立すると判断しました。誤った振り込みをしてしまった人の損害については、不当利得返還請求で解決を図る必要があるという訳です。
ちなみにマンガの事例でパン田さんが不当利得返還請求をする相手は、差押えをして誤振込金を取得する牛田さんではなく、誤った振り込みを受けたハムちゃんです。つまり、パン田さんがハムちゃんに不当利得返還請求をしたとしても、ハムちゃんが無資力で損害を回復することは出来ないというパターンもあり得るということです。不当利得返還請求はあくまでも、不当な利得を持った人にするものということを理解しておく必要があります。
関連条文は?
第666条
1.第五節(消費貸借)の規定は、受寄者が契約により寄託物を消費することができる場合について準用する。
2.前項において準用する第591条第1項の規定にかかわらず、前項の契約に返還の時期を定めなかったときは、寄託者は、いつでも返還を請求することができる。
第703条
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。