平成7年6月9日 損害賠償請求事件 最高裁第二小法廷判決
*実際の事例で、牛田さんに損害賠償を命じたのは差戻控訴審となります。
ポイントは?
医者、医療機関は治療を行う上で注意義務があるわけですが、この注意義務はどの程度の医療水準を元にするべきなのかという問題があります。医療水準は全国一律で考えるべきという考え方もあるのですが、そうなると規模の小さな病院と大きな病院との間でバランスが取れないことも出てきます。
マンガの事例では、未熟児網膜症の治療法に関することで争いになったのですが、光凝固法がどの程度普及していたのか、全国的に一律に普及していない場合は医療機関ごとの特性や地域性は考慮する必要があるのかということで争いになったのです。
判決では、新しい治療法が普及するには一定の時間を要するとして、新しい治療法に基づく医療水準が求められるかどうかは医療機関の性格、地域の医療環境の特性などを考慮した上で判断する必要があるとして破棄差戻としました。そして、差戻控訴審では牛田病院が所在する県の公立病院では光凝固法がある程度普及していたこと、牛田病院が地域の中心的病院であったことなどから、光凝固法に関する知見を有しているべきとして注意義務違反を認めて賠償を命じました。
関連条文は?
第709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。