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昭和63年7月1日 損害賠償請求本訴、同反訴事件 最高裁 第二小法廷判決
*実際の事例では、事故は交差点で発生していて事故の被害者は複数います。またパン田さんは自身の過失は0と主張しましたが認められずに、2(パン田さん):8(ハムちゃん)の過失割合と裁判所に判断されたという事情があります。
ポイントは?
不法行為を複数の人で行った場合は、関わった複数の人が共同不法行為者として被害者に対して損害賠償責任を負います。
被害者側は共同不法行為者の誰に対してであっても、損害の全額を請求することが出来ます。そして、共同不法行為者の中の誰かが一人で損害賠償に応じた場合は、他の共同不法行為者に対して、負担割合に応じて求償することが出来ることになります。負担割合は責任の度合いと考えると分かりやすいと思います。
マンガの事例では、共同不法行為者の一人のハムちゃんがタクシー運転手となっていて、タクシー会社も使用者として共同不法行為者となったという状態になっています。共同不法行為の求償と、使用者責任の問題が入り混じってややこしいことになってしまったのです。
共同不法行為者の一人であるパン田さんは、被害者に対して損害の全額を賠償しています。そのため、他の共同不法行為者となるカラスタクシーに対して求償をしたのですが、カラスタクシーは過失がゼロになることを理由に求償に応じなかったのです。
事故を起こした二人とタクシー会社の3者を別々に考えて、過失があるかどうかを検討すると、確かにタクシー会社自体は事故に直接的に関わっていないのですから過失は0です。ですが、タクシー会社は使用者ということからハムちゃんと同じ立場として過失があると考えれば、ハムちゃんと一緒に8割の責任があると考えることも出来そうです。
判決では、共同不法行為者の一人となるパン田さんは、同じく共同不法行為者のハムちゃんが勤務するタクシー会社に対して、負担割合を超えた部分を請求出来ると判断しました。
使用者責任が民法に定められているのは、会社が社員を雇用して利益を得ようとしている以上は、社員が不法行為を犯したことによる損失も負うべきという考えが元になっていることから、マンガの事例のような場合にも社員であるハムちゃんと会社は一体となっているものと見る必要があるとしたのです。
関連条文は?
第709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
第715条
1.ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2.使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3.前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
第719条
1.数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
2.行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。