昭和58年12月16日 婚姻費用分担及び子の監護に関する処分審判に対する即時抗告申立事件 東京高裁 決定
*実際の事例では、パン田さんにも酒を飲んで暴れるなどの行動があり、パン田さんから離婚訴訟が提起されています。
ポイントは?
婚姻費用は、夫婦として家族として生活をするのに必要な生活費ということになります。マンガの事例では、別居中の出来事となりますので別居中の生活費と考えると分かりやすいでしょう。
民法には婚姻費用の分担義務が明記されています。そこで、パン美さんは婚姻費用を請求した訳ですが、パン美さんとパン田さんの夫婦関係は破綻状態になっていたのです。
夫婦関係が破綻していたとしても、基本的には離婚をしない限りは婚姻費用の分担義務が消えることはありません。ところが、パン美さんの場合は一方的に別居をして、更に同居をしたいというパン田さんの要請を無視し続けてきたという事情があるのです。こういった場合にまで婚姻費用の分担義務があるのはおかしいのではないか?という考え方も成り立つという訳です。
判決では、パン美さんが一方的に別居をして、同居要請も無視して、更に同居するための努力もまったくしていない状態の場合は、別居にやむを得ない事情が無い限りはパン美さん自身の婚姻費用請求は権利の濫用になり許されないと判断しました。ただし、婚姻費用は妻であるパン美さんの生活費だけではなく、子どもの生活費も含むものになるため子どもの生活費部分の婚姻費用の請求は認められています。
このマンガの事例は別居に至る経緯や、その後の経過も含めて妻の婚姻費用請求を否定したものとなりますので、単純に「婚姻関係の破綻 = 婚姻費用支払義務無し」という訳ではない点に注意してください。
関連条文は?
第1条
3.権利の濫用は、これを許さない。
第752条
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
第760条
夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。