昭和50年4月8日 相続回復、所有権更生登記手続請求事件 最高裁 第三小法廷判決
ポイントは?
現在では出生届の届出時に、医師の出生証明書の添付が必須とされているために虚偽の出生届が出されることはほぼ無いと思われます。しかし、戦前は出生証明書の添付をする必要もなかったため、虚偽の出生届が出される事例は非常に多かったという現実があります。
マンガの事例のように、他人の子どもを自分の子どもとして、虚偽の出生届を届け出ることを【藁(わら)の上からの養子】と言います。
藁の上からの養子で届出された出生届は、基本的には無効となりますが、当事者の間で争いにならなければ、そのまま実の親子として扱われてしまうのが実情です。
仮に争いになって出生届が無効にされたとしても、虚偽の嫡出子出生届は養子縁組届の効力が発生するのではないかとも考え方もあり、ハムちゃんも養子縁組として有効になると主張しています。
また、マンガの事例では母パン美さんと、ハムちゃんの親子関係は無いという判決が事前に出ていますが、父パン太さんとハムちゃんの親子関係は争われていなかったため、こういった相続の問題で裁判をする前に父子の親子関係について裁判をするべきとハムちゃんは主張しました。
判決では、養子縁組届は法定の届出をしないと効力は発生しないとして、無効な出生届の養子縁組届への転換を認めませんでした。また、事前に父子の親子関係に関する判決が出ていないとしても、今回争いになったこの裁判の中で親子関係があるかどうかの判断をすることが出来ると判断しました。
関連条文は?
第792条
成年に達した者は、養子をすることができる。
第797条
1.養子となる者が15歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、縁組の承諾をすることができる。
2.法定代理人が前項の承諾をするには、養子となる者の父母でその監護をすべき者であるものが他にあるときは、その同意を得なければならない。養子となる者の父母で親権を停止されているものがあるときも、同様とする。
第798条
未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。ただし、自己又は配偶者の直系卑属を養子とする場合は、この限りでない。