平成14年12月16日 特別養子縁組審判に対する抗告事件 東京高裁決定
*実際の事例では、ぴょん美さんとぴょん吉さんの間には二人の間で誕生した実子がいます。また、ぴょん吉さんが実父ではないとして親子関係不存在確認の申立もされており、そのことも判決内では言及されています。
ポイントは?
特別養子縁組は、実親との親族関係を終了させて、養親の実子になるもので、民法では普通の養子縁組よりも厳しい規定がされています。
特別養子縁組を認める規定の中でも、今回のマンガの事例に関係するものとしては、次の2点があります。
・父母の同意が必要
・父母が子どもを養育することがすごく困難だったり、不適当な場合に認められる
マンガの事例では、母であるぴょん美さんが、特別養子縁組の同意を撤回したことから、特別養子縁組に必要な要件を満たさないことになったのです。
ところが、民法には次のような規定もあります。
「子どもの利益をすごい害する場合は、父母の同意が無くてもOKだよ」
この規定から養親となるパン田夫婦は、ぴょん美さんが安定した養育環境を整えていないことや、将来の計画も無いことから母からの同意が無くてもOKと主張したのです。
更に、ぴょん美さんは子どもを養育することもすごく困難な状態だとして、子どもを育てるのは困難だし、不適当だから特別養子縁組を認めるべきだとして、特別養子縁組を認めてもらうための申立てを決行したのです。
決定では、安定した養育環境を整えていないことや、将来の計画が明確ではないというだけで子どもの利益をすごい害するとは言えないと判断しました。そして、特別養子縁組を認める要件となる子どもを養育することがすごく困難だったり、不適当な場合にも該当しないとしました。
民法の規定は、虐待であるとか育児放棄、そして養育が難しい貧困状態とかを想定したもので、養育環境が安定していないという程度ではダメだとしたのです。
ちなみに、マンガの結論だけを見ると養親と子が引き離される悲しい結果になっているように見えますが、差戻審では養親と子の親子関係がしっかりしていることや、実母の元に戻すのに必要な両者の協力関係を築くことが困難であることから、特別養子縁組を認めるという結論が出ています。最終的には、子どもへの影響が大きすぎるということが決め手となったようです。
関連条文は?
第797条
1.養子となる者が15歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、縁組の承諾をすることができる。
2.法定代理人が前項の承諾をするには、養子となる者の父母でその監護をすべき者であるものが他にあるときは、その同意を得なければならない。養子となる者の父母で親権を停止されているものがあるときも、同様とする。
第817条の2
家庭裁判所は、次条から第817条の7までに定める要件があるときは、養親となる者の請求により、実方の血族との親族関係が終了する縁組(以下この款において「特別養子縁組」という。)を成立させることができる。
第817条の6
特別養子縁組の成立には、養子となる者の父母の同意がなければならない。ただし、父母がその意思を表示することができない場合又は父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合は、この限りでない。
第817条の7
特別養子縁組は、父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認めるときに、これを成立させるものとする。